吉野川市 K邸

建て主は県農林水産部に動務する。その仕事柄、地産地消、林業の活性化に繁がる家創りを前提に、当初より木の家に対して高い意識を持たれていた。その思いに答え、構造材は全てSGEC森林認証制度の認証材を使用。 大黒柱となる杉の丸太柱は、美馬地域で立木ごとに樹高、胸高直径、木材の強度、C02固定量等の性能を表示する 「森のショー ケース」から厳選された。大黒柱の伐採には家族全員で参加し、その思い出も柱という形として残る家創りとなった。

切組は後世への技術伝達を考慮し、近年主流となっているプレ力ツトではなく大工による手刻みを選択している。 建屋の性能面では、耐震等級2、次世代省工ネ基準IVをクリアする等、長期優良住宅の認定を受け、更に制震ダンパーによる地震対策も施している。仕上面では、外壁には焼杉板、テラス・ベランダ・フェンスに杉板_真壁造りの内部は杉板や和紙といった自然素材にこだわっている。

素材のみならず自然工ネルギーの活用についても重視した。断熱性能を高め、風の通りを良くし、夏冬の太陽の光を調節することで、エアコン等の過剰な設備に頼らなくても快適に過ごせることを証明している。また、太陽光発電や地下水の利用、薪ストープの設置で年間光熱費のマイナス化も実現。昔ながらの良い部分と新しい技術を併せ持つことで、人にも環境にも家計にも優しい家が完成した。

しかし家は性能の良さだけでは長い間その機能性を保つことは難しい。長く住み継ぐ秘訣は「家に対する愛着」にあると考えている。そのため建て主自らが塗装等の工事に参加することで愛着を育んでもらった。家の構造や機能を学びながら、汗を流して創ることの大変さを知つてもらいメンテナンスの予行演習を行う訳だが、こうした施主工事は完成後も家を大切に使い、守り、住み継いでいく意識の基盤となる。性能+心地良さ+愛着によって家族の葉がりを大切にし、長く住み継いで欲しいと願っている。