三好市立 東祖谷小学校・中学校
私達のチームは20数年余り前に大阪のPL学園小学校の設計をコンぺで頂いた。 その時創った建築言語は「自然建築」であった。自然建築とはフィジ力ルに自然環境に同調させるということだけでなく精神的にもオーセンティシティを持つているということが根本的条件である。今この思想がこの度の東祖谷統合小中学校設計のグランドコンセプトにも生かされた。
統合小中学校は1つの中学校と5つの小学校が現中学校用地に統合される。特に小学校は今までの数々の想い出が刻印された地を跡にし、新しい場所へ学びの舎を移すことになる。
通学についても当然マイク口バス利用が主となり、生活パターンが一変する。学校の統廳合は今日、人口減少、少子化社会にあって、地方には当たり前のように起きている現象である。設計に際してはこれらの歴史的景観地域での建築、新しいものと伝統の継承をどう提ズ。るかにある。学校は地域コミュ二ティ形成における核となるものであり、この度のような大事業は設計内容以前にその取組み、設計プロセスが大きな要素となる。市数育委員会の計らいで学校、地域を巻き込んだ数回のワークショップ、更に景観については東洋文化の研究で有名なアレックス・力一氏にも加わって頂き、多角的検討が加えられた。又、構造については市長の英断で「(大規模)木造で作る」ということであった。地産地消により地元の木を使い地場産業を育成するというものである。
大規模木造建築は設計だけでなく木材の調達から考えなければならず更に切旬材を最低1年以上乾燥したものを使わなければならない。 基本設計時に並行して地元の森林組合の皆様と一緒に山を調査し数量の確認をするといった、設計外の作業もあった。今更ながら大規模木造建築の多難さを痛感させられた。1万ページを遥かに超える構造計算書、模型を持ち回り建築指導課や消防署の許可をとったこと、 施行間際の三好市景観条例の先陣を切つて色彩合意を得たこと、地滑り対策を兼ねた基礎構造に対する土木事務所の同意・・等々あらゆる困難が立ちはだかったが完成した新しい地域のシンポルを関係者で眺め、追想した時、胸に去来するものがあった。これらの一つひとつが、私達が数年来考えてきた「自然建築」であったことは言うまでもない。